六白黒豚とは、鼻・しっぽ・足の先4本の合計六ヶ所が白い事から「六白」と呼ばれています。
品種はバークシャー種と呼ばれ、六白になる黒豚は、他の品種を交えない純粋品種です。
特に鹿児島産の六白黒豚は昔から飼育されている事から、他の黒豚と比べ歴史が長く高品質と評価されています。
黒いダイヤモンド
鹿児島の六白黒豚は、純粋黒豚でありながら、食肉市場では牛肉並の価格が付けられたことがあります。
その味や品質が高い事が、肉のプロを驚かせたのです。
その事から、鹿児島の六白黒豚は「黒いダイヤモンド」又は「鹿児島の至宝」との呼称が付きました。
歩く野菜
六白黒豚は非常に栄養豊富です。
その昔、戦国時代に九州を統一した島津氏は、戦に生きた六白黒豚を運び兵糧としたそうです。
栄養豊富かつ新鮮な六白黒豚は、兵士たちの体にも心にも活力となり、島津軍は強かったとまで言われています。
そんな自分で歩ける栄養豊富な六白黒豚を「歩く野菜」と称されました。
かの西郷隆盛も大好き
幕末の偉人である西郷隆盛も六白黒豚が好物でした。
特に角煮のような鹿児島の郷土料理「とんこつ」や、今でいう六白黒豚入り野菜炒めが大好物だったようです。
徳川将軍も大好き
しかし江戸末期に豚を献上したところ、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜はえらく気に入りました。
そのお気に入りっぷりは「豚一様」と呼ばれるほどでした。
また水戸藩主の重鎮も薩摩の豚を口にすると
「いかにも珍味、滋味あり。コクあり、なによりも精がつく」
と、手放しで称賛したそうです。
とんかつ屋のステータスに
1960年代の高度経済成長期には、東京で黒豚ブームが起こりました。
肉は黒豚を取り扱っているか否かで、その店のステータスが決まってしまいました。
その為に供給が追い付かず、当時2,000円ほどで取引されていましたが、ステータスの為に10万円という法外な金額で闇取引されたほどです。
白豚に押されるも…
成長が早く、大量に飼育できる白豚(三元豚など)の導入が日本で流行りだし、飼育に手間暇が必要な黒豚は、次第に忘れ去れました。
鹿児島でもより利回りが良い白豚生産が盛んになり、黒豚生産者は最早懐かしい雰囲気にまで落ち込みます。
そして黒豚の生産自体、無くなろうとしていました。
しかし当時の鹿児島県知事は
「黒豚は鹿児島の宝。だから黒豚は残す」
と黒豚生産に力を入れました。
そして1980年代に到来したグルメブームで、黒豚生産者は苦しい時期を乗り越え、再び鹿児島の黒豚は脚光を浴びました。
偽物の黒豚まで…
再び黒豚が脚光を浴びましたが、品質の高い黒豚は大量生産できません。
なので黒豚と白豚を掛け合わせて「黒豚」と名乗ったり、最早ただの白豚を加工して「黒豚」と偽り販売する輩が増えました。
それまで黒豚に無関心だった国の行政は
「純粋バークシャー種の交配によって誕生した豚」
のみを黒豚の定義とし、商標も取りました。
これにより、偽物の黒豚は消滅していき、再びブランド豚として確立していきました。
現在も豚の最高位水準
近年では、様々なブランド豚が生まれています。
しかしその多くは鹿児島黒豚の飼育方法などを参考にされているそうです。
そして鹿児島自身もブランドにあぐらをかくとこなく、黒豚の飼育研究を続け、その品質は常に進化し続けています。
偉人達も愛した黒豚の味
このように、歴史の偉人に愛され、偽物が出回るほど人気の黒豚。
もちろんネームバリューだけでは、ここまでブランドは確立しません。
その「味」こそが黒いダイヤモンドであり、鹿児島の至宝です。
食感
筋繊維が細く多く肉質のしまりに優れている為、非常に柔らかいのに歯切れがとても良いのが特徴です。
旨み
味はブドウ糖であるグルコースや、その他の中性糖を含んでいるために、ほのかな甘みが感じられます。
また、旨み成分を多く含んでいるので、口に残る味は、とても奥深く旨味の余韻を残します。
良質な脂身
特に甘味を感じられる脂身は、鹿児島では脂身ではなく「白身」と呼ばれます。
その白身は、融ける温度が高いために、調理してもサッパリした食感です。
健康にも
美味しいさを追求するあまり、不健康な食べ物になってしまっては本末転倒です。
鹿児島の六白黒豚は、そこも追及しています。
その成果は、不飽和脂肪酸が多いためコレステロールを減らす働きがあり、通常の豚肉より太りにくいと言われています。
また、ビタミンB1も通常の豚より多いので糖質をエネルギーに代え、そのうえ疲労回復も期待きます。
「歩く野菜」は今でも健在なのです。
コメント